コラム

冬の不調はウィンター・ブルー?

2024年2月
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節分が過ぎ、暦の上では春を迎えましたが、朝晩は未だ肌寒い日が続いています。こちらのコラムをお読みになられている方の中には、肌寒さを感じる頃から気持ちの落ち込みや、やる気の低下、強い眠気といった不調を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。毎年寒くなるたびに体調の変化を感じている場合、“寒さが苦手なだけかな?”と思いがちなところですが、もしかするとこれらの不調は「ウィンター・ブルー」と言われているものかもしれません。

◇ウィンター・ブルーとは?
  季節性うつ病、季節性情動障害とも呼ばれる病気です。毎年決まった時期に気分の落ち込みなどの症状が現れるという特徴があります。日照時間と深い関わりがあると言われており、10~11月頃の秋口から症状が現れ始め、春先の3月頃になると自然と回復するという特有のサイクルを繰り返します。

◇症状は?
  気力の減退や落ち込み、強い疲労感、体の怠さ、無気力やイライラといった気分の波などの症状が現れます。また、従来のうつ病では「眠れない」「食欲がない」などの症状が見られますが、ウィンター・ブルーの場合は、過眠(寝ても寝ても眠い)、過食(食べても食べても食べたい)、体重増加、炭水化物渇望(白米やパン、パスタ、チョコレートなどの菓子類を好む)が多く見られます。

◇発症のメカニズム?
  秋冬の日照時間の短さが関係していると言われています。日照時間が短くなると、体に対する光の刺激が減り、日光を浴びることで分泌されるセロトニン(脳の興奮を鎮めて精神を安定させる脳内の神経伝達物質)の分泌量が減少し、気分が落ち込んだりイライラしやすくなったりする可能性があるということです。また、セロトニンは睡眠に関連するホルモンであるメラトニンの材料となるため、セロトニンが減少するとメラトニンの分泌の調整も乱れ、睡眠・覚醒リズムに変調をきたしやすくなります。              
  日光(紫外線)を浴びることで体内合成される栄養素としてビタミンDがあります。ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を促進し、骨を丈夫にしたり、免疫機能を調整・維持したりと様々な働きを担う栄養素であり、うつ病との関連も指摘されています。

◇予防法は?
   《日光を浴びる》
  セロトニン不足、ビタミンD不足を防ぐために朝に日光を浴びるようにしましょう。晴れの日はもちろんのこと、曇りの日や雨の日でも日光は体に届きます。天気に関わらず、毎日日光にあたることを意識して過ごしてみましょう。時間は、長ければ長い程良いということではなく、一日15~30分程で十分です。寒い日は外に出るのが億劫になりがちですが、午前中に散歩をしたり買い物へ出かけたりする等、屋外での活動を習慣化してみましょう。屋内で過ごす時間が多かったり、屋外に出る機会が少なかったりする方は、窓辺で食事をしたり読書をしたりして過ごすだけでも良い影響が期待できます。

《バランスの良い食事を心がける》
  バランスの良い食事は、心の安定につながるセロトニンの生成を促します。大豆製品、乳製品、肉、魚などのタンパク質にはセロトニンの生成に必要な「トリプトファン」という必須アミノ酸が含まれています。また、ビタミンB6、マグネシウムといったビタミンやミネラルを含む食品もセロトニンの生成に関わるため、満遍なく様々な栄養素を摂っていくことが大切です。
  ビタミンDは、魚介類、キノコ類、卵類などに多く含まれています。脂溶性のビタミンのため、脂質を含む動物性食品から摂取した方が吸収しやすいのですが、キノコ類も炒め物や揚げ物として油とともに摂取することで吸収率を上げることが出来ます。なお、ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、過剰な分を体外に排出しにくく、サプリメント等で過剰に摂取すると健康を害することがあります(高カルシウム血症、骨や歯以外の軟組織の石灰化障害、腎機能障害)。過不足なく適度に摂取しましょう。

《適度な運動》
  適度な運動は、気持ちを前向きにしたり、ストレスを解消したりする効果が期待できます。特にセロトニンの分泌には一定のリズムで行う運動が効果的と言われています。一定のリズムのある動作を繰り返すと、脳が「安定している」と感じ、その安定した動きを維持しようとしてセロトニンが分泌されます。一定のリズムというのは、ウォーキングやジョギング、自転車のペダルこぎがおすすめです。家の中で可能なものとしては、踏み台昇降やスクワットなどが挙げられます。リズムにのって気持ちよく5分間以上を目安に行ってみましょう。

ウィンター・ブルーは誰がなってもおかしくありません。予防法を参考にしながら寒い時期を乗り切っていきましょう。 そして、例年の冬を思い返して症状が当てはまると思う方は、無理をせずに早めに専門医にご相談いただけたらと思います。

[参考・引用]
・(監修)功刀浩(2022)「ビタミンDはゆううつな気分を改善する」,『へるすあっぷ21』,2022年10月号,p.52,法研.
・功刀浩(2018)「こころに効く精神栄養学」,p75-92,女子栄養大学出版部.
・一般財団法人 茨城県メディカルセンター(2021)「健康まめ知識 日照時間の短い季節は、季節性うつ(季節性情動障害)に要注意!」
<https://imc.or.jp/archives/mamechishiki/日照時間の短い季節は、季節性うつ(季節性情動> (参照2024.1) 
・小山文彦(2023)「“幸せホルモン”でストレス解消,運動はリズムにのって」,『きょうの健康』,2023年7月号,p10,NHK出版.