コラム

気象病

2022年10月
KURA

このコラムを読まれている皆さんの中には、気候の変化による体調不良に悩まされている方がいらっしゃるのではないでしょうか。身体の不調はメンタルにも影響しますので、「気象病」が原因でメンタルにつらさを抱えている方がいらっしゃるかもしれません。                 
 今年の夏の酷暑と大雨は記憶に新しく、これまで気にしてこなかった方の中にも、極端な気候の変化に身体がうまくついていかず、「気象病」を意識するようになられた方がいらっしゃるのではないかと思います。

                  
気象病とは?                 
 天気(気圧・気温・湿度)の変化が耳の奥の内耳から自律神経に作用して現れる不調のことです。その症状としては、頭痛、めまい、首こり・肩こり、腰痛、関節痛、むくみ、耳鳴り、倦怠感、しびれ、気分の落ち込みなどが出ると言われています。ただし、「気象病」という病名は正式な病名ではないので、聞いたことがないという方も多いかもしれません。


なぜ、天気の変化が身体の不調につながるの?
 気象病の原因は、「気圧」「気温」「湿度」の3つと言われています。これらが変化することで人の身身体がストレスを感じ、それに抵抗しようと自律神経が作用します。その際、交感神経と副交感神経の調整がうまくいかず身体が不調をきたしてしまうということです。
 自律神経とは、内臓や代謝、体温といった身体の機能を24時間体制でコントロールする神経のことで、心と身体を活発にする交感神経と、休ませる副交感神経がバランスを取りながら、私たちの身体を支えています。 


●「気圧」
 私たちの身体は四方八方から気圧を受けていて、同じだけの力で内側から空気を押し返しています。しかも、身体の形状は常に一定ではなく、短い間隔で膨張と収縮を繰り返していて、表面だけでなく、体内に流れる液体や気体、臓器の大きさも連動して変わっているのです。
 このように、私たちの身体は、日々の気圧の変化に対応しているのですが、台風、季節の変わり目、雨が降り出すときなど、通常より上げ下げの幅が大きくなり、そのような日は、気象病の発症リスクが高まるので注意が必要です。
 また、気圧の変化を感じるセンサーが、内耳に備わっています。内耳センサーが気圧の変化を敏感に感じると、その情報が脳に伝わり、自律神経の交感神経と副交感神経のバランスが乱れて、頭痛、めまい、肩こり、痛み、倦怠感などの症状が現れると考えられています。


●「気温」
 気温や湿度を感じるセンサーは、おもに皮膚や粘膜で、中枢神経や内臓などにもあるそうです。これらが、外界の気温や湿度、さらには自分の体温や水分量の変化を感じ取っているのです。
 気温が急激に上がったり下がったりすると、それに身体を適応させようと自律神経の交感神経が優位な状態となり、エネルギー消費が増えます。それが、疲労感や倦怠感を生じさせることにつながります。気温差が大きくて身体が疲れてしまうことを「寒暖差疲労」といいます。単に疲れるだけではなく、頭痛、めまい、眠気、気分の落ち込み、肩こり、冷えなどの症状も出やすくなるのです。
 暑くなるタイミングで症状が出やすいのが片頭痛です。気温の上昇とともに血管が拡張して痛みがひどくなります。一方、寒くなるタイミングでは肩こり、緊張型頭痛、腕や足腰の痛みなどの症状が悪くなります。身体が冷えることで、筋肉が硬くなるからです。また、寒くなる時の方が自律神経の乱れが大きくなる傾向にあり、うつ病など心理的な不調に影響しやすいとも言われています。


●「湿度」
 梅雨は、湿度が高く、暑かったり寒かったり、また、気圧の変動も大きく、身体の不調とともに気分的にも晴れにくい、「気象病」の方にとっては憂鬱な時季になります。
 湿度が高くて温度が低めだと、皮膚の水分が乾燥しにくい状況になります。すると、本来、身体から自然に出て行くはずの水分がすぐに蒸発しないで身体の中に溜まってしまうため、身体のいたるところで症状が発生すると考えられています。
 湿気が引き起こす症状としては、食欲不振、消化不良、むくみ、便秘、頭痛や関節痛、めまい、うつにつながるような精神的不調など様々な不調があると言われています。


天気に左右されないためにどうしたらいいの?
 気象病の多くはもともと持っていた痛みや症状が天気の影響で悪化するものです。自分の体調不良が天気の影響を受けているとわかったら、まずは、天気の変化を予測して、急性の痛みを未然に防ぐことを考えてみましょう。


●天気と症状の関係を見える化する
 日付、天気予報、実際の天気、気圧、痛みを感じた場所、痛みの強さといった項目を決めて、自分の痛みを日誌として記録していきましょう。スマートフォンのメモ機能や手帳にメモするでもいいので一つでも続けることが大切です。しばらく続けてみると、天気と痛みの関連性が明らかになり、自分のなかでも不調になるパターンが見えてくると思われます。


●耳の血行不良と整える
 日誌を参考に、症状が現れるタイミングの前に耳の血行をよくすることで、内耳センサーの感受性が下がり、気象病の症状を和らげることができます。血行をよくする方法としては、ホットタオルでじっくりと耳全体を温めたり、耳マッサージ、耳の後ろにあるツボを刺激するなど、自分に合った方法を試してみましょう。


●身体を動かして自律神経を整える
 自律神経を整えるための習慣として、睡眠と食事が大切ですが、もうひとつ習慣にしたいのは、身体を動かすことです。身体を動かすことは、交感神経を働かせる、副交感神経から交感神経へのスイッチの切り替えをスムーズにするために非常に大切です。軽いストレッチ、ウオーキングのように身体に大きな負担にならない運動から始めて続けていきましょう。


●汗をかける身体をつくる
 そもそも発汗というのは、熱が蒸発するときの気化熱を利用して身体の中にある熱を放出し、体温を下げる機能になります。湿度が高い梅雨の時季は、水分が蒸発しにくくなるので、汗をかける身体づくりのポイントは、梅雨入り前にその状態を作っておくことになります。軽いジョギングであれば、1日15分~20分、これを2週間続けてみてください。運動するのが大変であれば、ぬるめのお風呂に15分~20分浸しながら身体を温めるのもよいでしょう。
 

身体の不調が良くなると、心も楽になることがあります。自律神経のメンテナンスを大事に忘れず、天気の変化に負けない身体を作っていきましょう!
 

引用・参考文献
 佐藤 純 (2022) 「天気が悪いと調子が悪い」と自分で治す本  株式会社アスコム