コラム

発達障害

2018年11月
土井

発達障害という言葉は少し前、現在の概ね成人世代が子どもの頃はあまり耳なじみのなかった考え方ですね。ただ、このコラムをご覧になっている成人の方の中には、ご自身が小学生の頃に「そういえばクラスで座っていられない子がいたな」とか、「話し合いでどうしても自分の意見をゆずれない子がいたな」なんて思い出す存在がいるかもしれません。このような特徴に対して、近年では発達障害・ADHD・自閉症・学習障害等という説明付けがされています。

しかし、こうした特徴からだけで考えますと、「低学年の子どもがチョロチョロするのなんて当たり前じゃない?」、「意見がゆずれないからって発達障害なら、単なるわがままとどう違うの?」こうした疑問が生じるのは自然なことで、難しいのはこうした場合の、どこからが問題なのか、という線引きですね。

DSM-5という、米国精神医学会が発刊している診断基準マニュアルでは、自閉症や以前までアスペルガー障害と名前のつけられていた状態は、程度や質の観点で診断されるようになりました。

つまり、一例を挙げますと「意見がゆずれない」等という特徴によって、ご本人が自分では対処できないくらい困っていたり、ご家族や周囲が困り、見逃せないような問題となってしまっている場合、そうした現実場面や生活における当事者の困り感の程度と質、その他の情報を元に医師が診断名という説明を付けます。

DSM-5では自閉症を、

  • ①社会的コミュニケーションの障害
  • ②限局された反復的な行動・思考

以上の2点を大分類としての特徴に対し、「自閉症スペクトラム症」と名付けています。上記した程度や質、という部分がスペクトラム(連続体)、という考え方になります。

ただ、これだけだと少し分かりづらいですね。

①の社会的コミュニケーションの障害というのは、“空気が読めない”“冗談が通じない”等が具体的な特徴としてよく挙げられることが多いです。

②については、前述した“意見がゆずれない”という特徴を“こだわりの強さ”と言い換えたものや、“臨機応変な対応が苦手”“関心のあることにのめり込むくらい集中しすぎる”といった特徴が挙げられます。

学校や職場にこうした、“空気が読めない”と言われる人や、こだわりの強い人はいるかもしれませんが、それがどの程度本人も周囲も困ってしまっている問題なのかによってその説明・理解が変わります。

その程度を測る方法として、能力を測る検査と、お話をさせていただく中でこれまでの生活上どういった場面でその問題が生じてきたのか、その他にもどのような特徴があったのかを、カウンセリングを通して整理させていただく時間を取ることが考えられます。

カウンセリングでは、そうした問題の程度や質の客観的理解を、相談者の方とカウンセラーとで共有することを経て、「それではどうしていきましょうか」という点について、ご一緒に考えたり、助言させていただいています。

とりわけここ数年、成人の方で発達障害に関する悩みを持たれていらっしゃる方が多くお見えになります。

こうした相談者の方の多くは、一方のことは他の人と同等にできるにも関わらず、コミュニケーション等、特定のことに関してとっても苦手だとお話し下さいます。

他のことは自分にもできるのに、周囲の人が当たり前にやれているこのことはできない。しかし、社会の中・仕事の上ではそれを求められてしまう、また他にも、自分は正しいことを言っているだけなのに変な人のように評価されてしまう、等々というのは何と息苦しい思いのすることでしょうか、とお話を伺いながら感じます。

カウンセリングでは、そうしたお気持ちをお聴きし、そしてご自身の特徴について一緒に理解していきます。元々お持ちの長所を活かしながら、どのようにして苦手なことと付き合っていくか、対処していくかをご一緒に考えたいと思っています。

もしこうしたことを抱えながら頑張っていらっしゃることに疲れを感じるようでしたら、ぜひご一緒に、「それではどうしていきましょうか」と作戦会議を開きましょう。