新緑の色が濃くなり、初夏の清々しさを感じさせる爽やかな季節になりました。ゴールデン・ウイークに旅行に出かけたり、休日にアウトドアを楽しんだりするなど、イベントを計画中の方も多いと思います。ぽかぽかした過ごしやすい気候で外出には最適な季節なのですが、「五月病」が発生しやすい季節でもあります。
最初は、何となく体がだるい、何となくやる気にならない、何となく楽しめないといったように、なんとなく普段通りではないのだけれど病院に行くほどでもない違和感から始まります。はっきりした理由が見当たらないままそれが続いて、体調不良(頭痛・胃痛・腹痛・眩暈)や、睡眠不良(寝つきが悪くなる・夜中に目が覚める・朝方早く目が覚める・熟睡できない)、気分不良(滅入る・億劫になる・イライラする、集中できない)といった症状になり、学校や職場に行くことや、家事や日常生活に支障をきたす状態になることを言います。
日本では4月から新年度が始まります。それに伴い、私たちを取り巻く環境が変化します。その変化が大きかった人ほど、「五月病」になるリスクが高くなると言われています。
これらのように環境が変わると私たちは、新しい環境に合わせよう、適応しようとします。例えば、初対面の人と関わるときには、どんな人なのだろうと最初は警戒するでしょう。また、新しい仕事を任されたら、間違えないようにと慣れるまで注意を張り巡らせるでしょうし、毎日通う場所が変わった場合は、起床時間や通勤経路に慣れるまで生活リズムが落ちつかない、といった具合です。変化に対応しようと緊張状態が続くことが、心身の疲労につながり、体調や行動にも影響を及ぼすことになるのです。入学、就職、昇進といった嬉しい変化であっても、「五月病」の元になり得るのです。
環境の変化により、心身ともに緊張している状態が続くということは、普段よりもエネルギーを多く使いながら生活していることになります。しかし、その真っ只中にいるときは、目の前のことに追われて忙しく、気分が高揚していることもあり、エネルギーを多く消耗していることには無自覚な人が多いようです。苦しいことや悲しいことといったネガティブな変化であれば感じやすいのですが、新しいことや期待をかけられて嬉しいといったポジティブな変化に対しては、疲労感が感じにくくなります。そのため、つい無理をして、適応力のキャパシティを超えてしまうことが心配されます。
走り続けているのですから、疲労が蓄積されて行くのは当然です。まず、環境になんらかの変化があった人は、自分は普段より疲れているかもしれないと自覚することが必要です。毎日の睡眠時間を十分に確保する、その上で、心身ともにリラックスして緊張を緩めることができるように充分な休息をとることが大切でしょう。休日は、旅行や用事などで全日程を埋めることがないように、疲労を回復するための休息日を設けるように心掛けて下さい。新しく何かを始めるということは、環境の変化を重ねることになります。つまり、新たな緊張による疲労蓄積につながることにもなるので、開始時期については慎重な判断が必要と思われます。
もし、「学校に行きたくない」、「会社に行くのになんとなく抵抗感がある」、「なんだかだるくてやる気がしない」など心身の不調がでてきたら、早めに専門家に相談することをお勧めします。「五月病」を改善するには、自分の中で何が起こっているのかを紐解いて、自分の価値観や人生観を見直し、これからの生き方について思慮を深めたり、変化(=ストレス)の対処方法についてカウンセリングを受けたり、また、緊張を自分で緩められる(=リラクゼーション)ようにトレーニングを受けるなど、何らかの対応方法を会得することが有効だと思われます。