コラム

「助けて」と言うのは案外難しい

2025年3月
土屋
    「助けて」と言うことは、簡単なようでいて、実際にはいくつものハードルを越えなければならないようです。心の中では助けを求めたい気持ちがあっても、言葉にして誰かに伝えることは、思っている以上に難しいものです。

    その理由の一つは、自分の心の状態を正しく認識することの難しさです。例えば、「最近、何をしても楽しくない」「疲れが抜けず、朝起きるのがつらい」「理由もなく涙が出る」などのサインが出ていても、「ただの疲れだろう」「気の持ちようでなんとかなる」とそれを深刻に受け止めず様子をみ続けてしまうことは多いでしょう。また、「これくらいで弱音を吐いてはいけない」「もっと大変な人がいるのに、自分だけが甘えているのではないか」といった考えが、助けを求めることをためらわせる要因にもなります。

    また、心の不調の原因を正しく理解することも重要です。仕事のストレス、人間関係の悩み、睡眠不足など、さまざまな要因が絡み合って心のバランスが崩れることがあります。しかし、多くの場合、私たちは表面的な原因に目を向けがちで、本当の要因を見落としてしまうことがあります。「仕事が忙しいから仕方ない」と考えているうちに、実はその背景に「周囲の期待に応えなければならない」というプレッシャーがあり、それが大きな負担になっていることに気づかないこともあります。原因を誤解すると、適切な対処ができず、結果的に問題が長引いたり、さらに悪化したりする可能性があります。
【Aについて】養育者から放置されて生活し、結果的に施設に一時保護された。施設からでた後も様々な問題で家を転々としてきた。そんなAは、学校でひどいケンカを起こしたり、赤ちゃんのように丸まって寝ていたり、自分のことを「悪魔」と呼んだり…。そんなAへプレイセラピーを導入することとなった。

    さらに、「どこに相談すればいいのか」を知っていることも重要です。「誰に話せばいいのか分からない」「どんな機関が自分に合っているのかが判断できない」と感じることは、援助を求めるうえでの大きな壁になり得ます。インターネットや周囲の情報を頼りに相談先を探しても、なにが信頼できる情報なのか見極めることが困難だったり、「本当に自分の悩みを理解してくれるのだろうか」と不安になったりすることもあるでしょう。その結果、調べること自体が負担になり、何もしないまま時間が経ってしまうこともあります。

    さらに、「どこに相談すればいいのか」を知っていることも重要です。「誰に話せばいいのか分からない」「どんな機関が自分に合っているのかが判断できない」と感じることは、援助を求めるうえでの大きな壁になり得ます。インターネットや周囲の情報を頼りに相談先を探しても、なにが信頼できる情報なのか見極めることが困難だったり、「本当に自分の悩みを理解してくれるのだろうか」と不安になったりすることもあるでしょう。その結果、調べること自体が負担になり、何もしないまま時間が経ってしまうこともあります。

    また、「助けを求めることは恥ずかしい」「周囲に知られたらどうしよう」といった不安や偏見(スティグマ)が、援助を求めることをためらわせる要因にもなります。特に、精神的な問題に対する社会的な誤解が強いと、「相談することで周囲の目が変わるのではないか」と感じてしまい、一歩を踏み出せなくなることがあります。言葉にするのが難しく、「何をどう伝えればいいのかわからない」という不安や、過去に相談したときに否定されたり軽く扱われたりした経験から、援助を求めることをあきらめてしまうこともあります。

    以上のように、「助けて」と言うことは決して簡単なことではありません。実は援助を求めるにはスキルや知識、そして少しの「勇気」が必要なのです。そして、これらは誰もが最初から持っているものではありません。もしあなたが今、何かに悩みながらも、援助を求めることにためらっているのだとしたら、その気持ちはとても自然なものです。

    とはいえ、一人で抱え込むことで、心の負担はさらに大きくなり、余裕を失ってしまうこともあります。大切なのは、大きな一歩を踏み出そうとしなくてもいいということです。まずは、「誰かに話してみようかな」と思うこと、それだけでも十分な前進です。

    言葉にするのが難しければ、「今、何をどう伝えればいいのかわからない」とそのまま話してくださっても構いません。あなたの気持ちを整理するお手伝いをすることも、私たちカウンセラーの役割です。どうか、一度ご相談ください。一緒に考え、小さな一歩を踏み出すお手伝いができると思います。


引用・参考文献

  • 永井 智 (2017). 水野 治久(監修) 援助要請と被援助志向性の心理学——困っていても助けを求められない人の理解と援助—— 金子書房
  • 本田 真大 (2015). 援助要請のカウンセリング——「助けて」と言えない子どもと親への援助—— 金子書房ジャネット・ウエスト著 倉光修監訳 串崎真志・串崎幸代訳『子ども中心プレイセラピー』創元社 2010