コラム

子どもを認める・ほめるということ

2021年10月
坂本

今回は、子どもを「認める・ほめる」ということについてお話してみたいと思います。

私は以前、子育てに難しさを感じている親御さんのお話を聴かせていただく機会がよくあり、その方達にペアレント・トレーニングのプログラムを行わせていただいていました。
 ペアレント・トレーニングとは、簡単にいうと、保護者の方が子どもとの良い関わり方を学んで、子どもと良い関係を作り、楽しく子育てができるよう支援する保護者向けのプログラムです。いろいろな種類のペアレント・トレーニングがあり、全てを知っているわけではないのですが、多くのプログラムで子どもを「認める・ほめる」ことを重要視していると思います。
 つまり、子どもとの良い関わり、良い関係を築くには、「認める・ほめる」ということが大切!ということですね。

ただ、プログラムの中で、保護者の方から、「子どもをほめたいけど、どうやってほめてよいか分かりません。」「うちの子はほめるところがありません。」また、「正直、ほめたい気もちにもならないです。」という言葉がよく聞かれます。言いにくそうに吐露される方もいれば、どうして良いか途方にくれた様子でお話して下さる方もいらっしゃいました。このように悩まれている方は少なくないと思います。

では、子どもをどのように「認める・ほめる」と効果的なのか、ペアレント・トレーニングでよく言われている方法についてお伝えしたいと思います。
 そして、いつもプログラムを受けられる方にお願いしているのは、学んだ方法をすぐに実践してみてほしいこと、また、子どもより先にまず自分自身に行ってみてほしいとお伝えしています。それは、自分と近しい人への関わり程、自分に対する扱い方と似てくることが多いからです。心理学では、投影と言ったりします(※投影・・自分の心の中にある感情や資質や欲望を他者がもっているものと認知する現象)。たとえば、親御さん自身が、ご自分のことを“私って人と比べてダメだなぁ”と感じていると、お子さんに対しても“この子って他の子と比べてダメな子だなぁ”と感じやすいように思います。そのような状態の時に、いくら子どもをほめようと思っても、ほめたい気持ちにはならないし、ほめるところがないと感じても無理もないことなのです。そのため、お子さんを認めたい・ほめたいと思ったときは、まず先に親御さんが自分自身に「認める・ほめる」を行ってみて下さいとお伝えしています。

それでは、効果的な子どものほめ方ですが、以下に代表的なものを5つ挙げさせていただきます。

                 
  1. 認めることから
    普段から当たり前にやれていることを認める。「宿題やったね。」「大きいお花が描けたね。」と、子どもの認めてあげたい行動を言ってあげれば充分です。親御さん自身に対しても、「ごはん作ったね。」「今日も1日仕事したね。」などとやれていることを認めることをご自身にしてあげて下さい。
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  3. 具体的に簡潔に行動をほめる
    行動とは、あるペアレント・トレーニングでは、「見て、聞いて、数えられるもの」と定義されています。「廊下を走らず歩いているね。」、「朝起きておはようと言ってくれたね。」、「あと10分ってお約束を守ってくれたね。」等具体的な行動をほめることで、子どもに分かりやすく、伝わりやすくなります。親御さんご自身に対しても同様です。ご自分の人となりに注目することで、ほめることが難しくなっていることもあると思いますが、ご自分の行動に着目して、「認めて・ほめて」あげて下さい。
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  5. 結果をほめるのではなく、プロセスをほめる
    「賞をとってすごいね。」と結果に注目するほめ方をしていると、結果がでないとダメと思うようになってしまうかもしれません。子どもに対しては、「一生懸命練習していたね。ママはよく頑張っていたなって思うよ。」等プロセスに注目して、言葉かけをしてあげて下さい。親御さんご自身に対しても、「うまくいかないこともあるけど、忍耐強く子どもに接しているよね、よくやっているね。」等自分の日々の努力を認めてあげて下さい。
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  7. 25%ルール
    子どもがほめてあげたい行動をしている時に、完全に終わるのを待っていず、できるだけ早いタイミングで、行動の25%位でほめてあげると良いと言われています。着替えや勉強等取り掛かった時点ですかさず「認めて・ほめて」あげて下さい。これも、ご自分にもしてあげられるといいですね。「掃除をしようと立ち上がったね、偉いなー、私。」みたいに。
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  9. 誰かとの比較でほめない
    「お兄ちゃんは手伝ってくれないけど、あなたは手伝ってくれて偉いね。」ではなく、「〇〇を手伝ってくれてありがとう。とても助かる。」とその子の行動そのものをほめてあげて下さい。また、親御さんご自身に対しても同様です。「あの人より〇〇ができている。」ではなく、比較するなら「前より〇〇できるようになったね。」と過去の自分からの変化を認めてあげて下さい。
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最後に、ある詩を紹介したいと思います。
 詠み人知らずの詩で、ニュージーランドの子育て支援施設の壁に貼ってあったものとのことです。ご存じの方もいるかもしれませんが、子育て中のお母さんが自分を「認める・ほめる」のやり方が詰まっているように思います。何より、すごく温かい気持ちになる詩です。

『今日』

今日、わたしはお皿を洗わなかった

ベッドはぐちゃぐちゃ

浸けといたおむつはだんだんくさくなってきた

きのうこぼした食べかすが 床の上からわたしを見ている

窓ガラスはよごれすぎてアートみたい

雨が降るまでこのままだと思う

人に見られたら なんていわれるか

ひどいねえとか、だらしないとか

今日一日、何をしていたの?とか

わたしは、この子が眠るまで、おっぱいをやっていた

わたしは、この子が泣きやむまで、ずっとだっこしていた

わたしは、この子とかくれんぼした

わたしは、この子のためにおもちゃを鳴らした、

それはきゅうっと鳴った

わたしは、ぶらんこをゆすり、歌をうたった

わたしは、この子に、していいこととわるいことを、教えた

ほんとにいったい一日 何をしていたのかな

たいしたことはしなかったね、たぶん、それはほんと

でもこう考えれば、いいんじゃない?

今日一日、わたしは

澄んだ目をした、髪のふわふわな、この子のために

すごく大切なことを していたんだって

そしてもし、そっちのほうがほんとなら、

わたしはちゃーんとやったわけだ

          
参考文献
  1. 氏原ら(共編)  2005 『心理臨床大辞典(改訂版)』 培風館
  2. 野口啓示、のぐちふみこ 2009 『むずかしい子を育てるペアレント・トレーニング 親子に笑顔がもどる10の方法』 明石書店
  3. 森田ゆり 『しつけと体罰』 童話館出版
  4. オレンジの会NPO法人子ども家庭サポートセンターちば 2013 『コモンセンス・ペアレンティング 受講者用テキスト』
  5. 訳:伊藤比呂美 画:下田昌克 2016 『今日』 福音館書店