公認心理師法が施行されて今年で4年になります。以前は信頼できる心理職と言えば第一に臨床心理士が挙げられていましたが、徐々に公認心理師も世間から認識されてきているように感じます。
例えば映画『ファーストラブ』では主演の北川景子さんが公認心理師役を演じていました。心理職の求人でも公認心理師の求人が多く見られるようになってきています。
しかし、一般の方々からすれば、臨床心理士と公認心理師はどう違うのか分からないだろうと思います。今回のコラムでは、これらの資格の共通点と違いをご説明します。
臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて心の問題にアプローチする資格です。1988年に始まった資格で、公認心理師ができるまでは一番有名な心理職でした。1996年以降はスクールカウンセラーとして任用され、全国の小中学校で活躍しています。
臨床心理士の業務は下記の4種とされています。
➀種々の心理テスト等を用いての心理査定技法や面接査定に精通していること。
②一定の水準で臨床心理学的にかかわる面接援助技法を適用して、その的確な対応・処置能力を持っていること
③地域の心の健康活動にかかわる人的援助システムのコーディネーティングやコンサルテーションにかかわる能力を保持していること。
④自らの援助技法や査定技法を含めた多様な心理臨床実践に関する研究・調査とその発表等についての資質の涵養が要請されること
臨床心理士になるには指定大学院・専門職大学院を修了し、一次試験(筆記)と二次試験(面接)をパスする必要があります。さらに資格取得後も5年ごとに資格の再認定を受けなければなりません。
心理学に関する専門的知識技術をもって、心理に関する支援を行う国家資格です。2017年9月15日に公認心理師法が施行され、日本で初の心理職、公認心理師が生まれました。
公認心理師が行う業務は下記のように定められています。
保健医療,福祉,教育その他の分野において,専門的知識及び技術をもって,
➀心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し,その結果を分析すること。
②心理に関する支援を要する者に対し,その心理に関する相談に応じ,助言,指導その他の援助を行うこと。
③心理に関する支援を要する者の関係者に対し,その相談に応じ,助言,指導その他の援助を行うこと。
④心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。
公認心理師試験を受けるには、大学、大学院で指定科目を履修するか、大学で指定科目を履修後、指定の施設で2年以上実務経験を積む必要があります。ただし、経過措置として5年以上の実務経験を積み、現任者講習を受けるというルートもあります。
試験は筆記試験のみで、更新制度はありません。
臨床心理士も公認心理師も教育、医療、司法、福祉、産業など多領域にまたがる汎用性の資格であることが共通点です。これに対して、産業カウンセラーや臨床発達心理士などは専門領域が決まっています。
すでに臨床心理士は上記の領域で活躍していますし、公認心理師もこれから活動の場所が広がっていくものと思われます。
まず、いくら臨床心理士が実績があり、世間からの信頼があるといっても民間資格であることに変わりはありません。これに対して公認心理師は国家資格です。国家資格であることで、資格者の義務や罰則が法令で定められており、おのずと適正が図られると言えるでしょう。
第二に、臨床心理士は5年ごとに資格の再認定を受けなければなりませんが、公認心理師には更新制度がありません。公認心理師も研修制度を開拓していくとされていますが、今のところ研修を積むことの差別化は図られていません。
第三に、業務内容の一部に違いがあります。臨床心理士は調査・研究が業務内容に含まれますが、公認心理師には情報発信・提供が含まれる点が違います。臨床心理士には高度専門職業人としての専門性が、公認心理師には情報発信や啓蒙が求められるということになります。
第四に、目的に微妙な違いがあります。臨床心理士は多種多様な価値観を尊重し、自己実現を手伝うことを目的としていますが、公認心理師は国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的としています。自己実現を達成することと心の健康を保つことは重なる部分も多いですが、微妙な違いがあるように思います。
カウンセリングオフィスSARAは臨床心理士による組織で、カウンセラーは皆、臨床心理士資格を有しておりますが、ほとんどのカウンセラーが公認心理師の資格も有しています。さらに産業カウンセラー、精神保健福祉士などの資格を持っている者もいます。詳しくは「カウンセラーの紹介」のページをご覧ください。
上記でご説明したように、臨床心理士は5年ごとに資格更新が必要です。カウンセラーたちは日々研鑽を重ね、更新を達成しています。さらに人によっては公認心理師やその他の資格も取得し、そこで得られた知識技術をカウンセリングに生かしています。
資格が人を治すわけではありませんし、問題解決をするわけでもありません。しかし、来談される方の問題を正確に理解し、適切に対処するには専門的な知識技術が必要です。資格はそのための最低条件と言ってもいいかもしれません。