新型コロナウイルスの影響で、それまでの生活が一変しました。緊急事態宣言の発令を受けて不要不急の外出が制限され、自宅で過ごす時間も増えました。将来が不安になったり、経済が落ち込んで職を失ったりなど、メンタルヘルスへの影響は計り知れません。同居家族以外の人と直接会って話す機会は減りましたが、自宅で仕事をするテレワーク、就職活動でのWeb面接、学校ではオンライン授業を導入するなど、インターネットを活用したコミュニケーションが急速に普及し、新しい生活様式とともに私たちの生活の一部としてすでに当たり前のように動き始めています。このような突然の変化に、当オフィスでもカウンセリングサービスで皆様にお役に立つにはどうすべきかと考え、オンラインカウンセリングを導入しました。
実際にオンラインカウンセリングを行ってみると、直接対面のカウンセリングとは勝手が違うことに気付かされました。
オンラインカウンセリングを始める時というのは、IT機器を前に着席してビデオ通話をオンにするので、当たり前のことですが、いきなり顔が映し出されます。カウンセリングの最中も、何かアクシデントでもない限り、画面の構図は終了時まで変わりません。お顔の表情はよく見えるのですが、微妙なしぐさや身振りなど体の動作から伝え合うコミュニケーションには限界があると感じています。そのため、私自身は、せめて手振りの動作が映るようにと、常にカメラの位置を配慮するようにしております。
オンラインでお話しすると、微妙に声の届くタイミングにずれが生じるため、直接会って話している時と間合いが異なります。相槌を打ったのと、相手が話し始めようとするタイミングがかぶってしまい、話がはっきり聴き取れないことや、話を中断させてしてしまったこともありました。直接対面してお話を伺っている時は、「聴いています」という態度と「なるほど」という共感の意味を込めて相槌を打ちますが、オンラインカウンセリングではタイミングが難しいため少なくなりました。しかし、その代わりに、自然と頷きの動作が増えていると思います。
インターネットの通信環境によって、話が聞こえにくくなる場合もあります。中にはカウンセラーの声が聞こえにくい状況でもそれを指摘しにくい人もいるのではないでしょうか。また、音声が途切れたりノイズが入るとストレスに感じられることもあると思います。ネットとIT機器の環境を整えられるのが理想ですが、回線の不安定さなど事前に準備しきれない要素も残念ながら残ってしまいます。それゆえ、オンラインカウンセリングを行う時は、こちらの声をしっかり届けるため、そして、相手の声をしっかり聴きとるために、通信環境を整えた上で、はっきり、ゆっくりお話しすることを心掛けております。
オンラインカウンセリングなら、直接対面しなくてもいいですし、カウンセリングルームに出かけて行く必要もありません。
これまでカウンセリングを受けたくても、さまざまな心理的理由で躊躇しておられた人には、オンラインカウンセリングを体験することで、来室のカウンセリングへの足掛かりにするという使い方もあると思うのです。知らない場所で初対面のカウンセラーと話しをするというのは、期待を持つと同時に、緊張や不安もあり、それらが入り交じった複雑な心境になることが窺えます。オンラインカウンセリングであれば住み慣れた自分の部屋で、インターネットを通しての対面なので、場の雰囲気にのまれるような心配も少なく、安心して話せるのではないでしょうか。
カウンセリング施設が近くにない地域にお住まいの方、仕事や育児や介護で忙しくて時間がとれない方など、物理的な理由でカウンセリングを受けたくても受けられないという人もいらっしゃると思います。オンラインカウンセリングであれば、遠方にお住いの方でもインターネット環境が整っていれば利用できますし、移動時間が削減できる分、カウンセリングの時間を捻出しやすくなるのではないかと考えられます。
コロナ感染への不安から自粛生活を続けているため、家庭内でのストレスや外出できないことによるストレスからメンタルヘルスに支障をきたしている人もおられるのではないでしょうか。一人で考えることで次第にストレスが大きくなってしまうことも懸念されます。そのような状況を避けるための一助としてカウンセリングの活用があると思います。ただ、感染者がかなり増えている現状では、来室での対面カウンセリングですと、移動そのものに感染のリスクがあるため、新たなストレスを抱え込むことにもなりかねません。オンラインカウンセリングであれば、交通機関を利用して移動することも、直接対面することもしなくて済むため、感染のリスクがありません。
今後、コロナウイルスの第二波が来るのか、あるいはすでに来ているとも考えられ、オンラインによるコミュニケーションは更に進化していくのではないでしょうか。すでにオンラインコミュニケーションの必要性は認められており、コロナ禍が収まったとしても、オンラインコミュニケーションに慣れた人にとっては、カウンセリングはオンラインが当たり前という時代の到来もあるように思われます。ただ、オンラインカウンセリングは、直接対面しない分、インターネットを通して寄り添うことになるため、直接対面してのカウンセリングとは全く同じということではないように感じています。どちらが良いとか悪いとか、そういうことではありません。非言語的なコミュニケーションや直接的な支えが必要な場合もあると思います。オンラインカウンセリングと来室しての直接対面のカウンセリングの違いを知っていただき、ご自身の状態と現実的な環境、そしてカウンセリングに何を求めるのかを考慮した上でカウンセリングサービスをご利用していただければと思います。