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2019年9月 平元 

 9月になると学生の皆さんは夏休みが終わって、新学期が始まりますね。
 長い休みの後は、大人でも会社に行くのが億劫になります。1か月近く休みがある小中高校生は、家でまったり過ごしていた日々から、朝から授業を受ける生活に切り替える必要があり、さらには思春期の複雑な人間関係の中に飛び込むことになります。
 学校という場所は、集団で生活するため、皆と同じように動くことが求められ、協調性は大事なことではありますが、何だか知らないうちに、集団に少しでも後れを取ったり逆に目立ちすぎると「みんなとちがう」ものとして受け入れられなくなる風潮があるようです。
 また、最近はSNSでいつでもどこでも繋がれて、集団の連絡ペースについていくことを求められたり、「いかに自分が充実しているか」を示さなくてはいけないなど、一昔前とは違った悩みも出てきているのです。
 そんな学校でもプライベートでも「人と比較」しながらも、「一緒でなくてはいけない」という気持ちが、学生たちの心を追い詰め、その捌け口を求めて、他人や物に対して攻撃的になってしまう一つの要因かもしれません。
 これは大人も同様で、会社の中でも、親族関係の中でも、ママ友との関わりでも、「足並みをそろえなくてはいけない」という気持ちが働くことは生活の中で多々見られます。
集団の圧力が個人の意見に大きな影響を与えるものとして、社会心理学者のソロモン・アッシュの行った有名な実験があります。アッシュの同調実験として有名なこの実験を皆さんにも体験して頂きたいと思います。

 下の図Aと図Bを見比べてください。「図Aと同じ線を図Bから選んでください」と言われたら、あなたはどの線を選びますか?

 大体の方が、図Bの中の右の線を選ばれたと思います。それが正解です。
 しかし、アッシュの実験にはトリックがありました。8人の人が実験室に呼ばれて、そのうちの7人はサクラなのです。サクラ7人が正解を図Bの「真ん中の線」と言ったとします。皆自信を持って答えています。その時あなたは、「正解は右の線」と主張できるでしょうか?

 実験では、50人の実験参加者の行った全判断の32%が誤答で、サクラに同調した行動が見られました。サクラ無しで一人でこの課題を行うと正答率はほぼ100%なのにも関わらず。自分が正解だと思ったものが、周りとあまりにも違うと、頭ではちょっとおかしいな・・と思っていても、自分の考え方が違うのかな・・となってしまうことが分かる、とても面白い実験だと思います。

 このような集団圧力に私たちは日々さらされています。自分はこうだと思うけど、皆が言うからそうなのかな・・?自分ではそうは思わないけど、皆がいっていることが本当なのかな・・?と感じることは生活の中で多くあるのではないでしょうか?
 ここで生じる「自分はこうだと思うけど」を大切に出来ないと、自分の行動が何に基づいているのか、正しいと感じているのか分からなくなり、本当に辛いときに混乱が生じるのだと思います。
「学校に行きたくないのに、皆行っているから行かなくてはいけない」
「みんながランチに行くから、お金がないけど付き合わなきゃいけない」
「SNSでみんなが○さんを無視しようというから、しないといけない」
 本当にそうでしょうか?なぜ、それをしないといけないのでしょうか?自分がやりたいこと?周りがやってほしいこと?やったあとに後悔しない?
 そんな風に自分の気持ちに目を向けて、もし、辛い気持ちが起きてきたら、一度立ち止まってみてはいかがでしょうか。

 ここで金子みすゞさんの「わたしと小鳥とすずと」という有名な詩をご紹介したいと思います。

「わたしが両手をひろげても
お空はちっともとべないが

とべる小鳥はわたしのように
地面(じべた)をはやくは走れない

わたしがからだをゆすっても
きれいな音はでないけど

あの鳴るすずはわたしのように
たくさんなうたは知らないよ

すずと小鳥と、それからわたし
みんな違って みんないい」

 それぞれ得意不得意があって、皆それぞれでいいんだよということを教えてくれる、とっても暖かい詩ですよね。
 皆と一緒じゃなくていいから、自分なりの「これでいい」を見つけられたら・・きっと少し肩の力を抜いて過ごせるのではないでしょうか?

 この詩を皆さんにご紹介しようと思い、金子みすゞさんについて少し調べてみたら、なんと26歳で他界されるという波乱の人生を送っていました。こんなに温かい詩を作る方なのに、現実の生活では辛いことも多くあったようです。彼女の詩には、こうなったらいいなといった彼女自身の希望も入っていたのではないかと感じてしまいます。今、金子みすゞさんが目の前にいらしたら、なんて言葉かけができるかなと思いながら、彼女が感じたような苦しさを抱える方がいたら、少しでも楽になるお手伝いが出来たらいいなと思います。


 【引用・参考文献】
●鹿取廣人・杉本敏夫(編(2006)心理学[第2版]東京大学出版社
●金子みすゞ 矢崎節夫(選)(1987)金子みすゞ豆文庫 みんなをすきに JULA出版局

 
 

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